旅人は真っ昼間から酒を飲むのを許されているか

何のことを書こうとしていたのか。
忘れてしまった。
それで、今考えていることは何か。
休みの日は早い時間から飲み始めていて、脳がアルコール漬けになってきていること。
つまらん。
そんなありふれたダーティーな話を他人から聞かされても、うんざりではないか。
だがする。休みの日。昭和チックな店で昭和チックなカレーを食べて、俺はご満悦だった、チェーン店ではありえないぶっきらぼうな接客だったのも日々人間不信の俺からすると嬉しかったのだ。いざ帰ろうとして新幹線の待合室にいると、日本酒の自販機がひっそりと用意されていた。カップ酒とかそういうアル中のおっさんが寄りそうなやつではなかった。最近おすすめの地酒がいくつか飾られていて、プラのカップに注ぐというやつ、観光地にありそうなアレである。俺は買った。おすすめNO,2と書かれていた。選んだ理由は、ラベルのデザインが清涼感をかもし出していたから。俺がクソ暑い街なかを抜けてきたばかりだというそれだけのこと。時間は午後1時20分、ちょうどよい時間だ。ひきこもりには昼酒は許されないが、旅先でなら昼酒は許される。映画や小説では、外人は昼食で優雅に食中酒をあおるのがよくあるけれど、どうにも俺にはできないのだ。憧れはあるが、あれをすると結局は、顔を真赤にして床に横になってしまう。まあ、横になるといっても布団ではない、床にだ。これ重要。布団は横になる場所だ、横になるための場所だ、横になるのが正しい場所だ。なのに、昼間から頭をスポンジのようにふやけさせているこの俺は、正しくない。だから横になっていて正しくないところに転がらなければならない。かといって、白昼の国道なんかに寝っ転がるわけにはいかない。それで俺は自分の部屋の床に転がっているのだ。ささやかな、悪の意識を確かめるために。床は寝る場所じゃないし、誰に見られる心配もない。なんてちっぽけな世界に生きているんだろう。俺はどうやら、自分だけの世界でひとり悪ぶっていることに満足を感じているらしい。